サルデーニャには、いくつかの魅力的な小さな博物館がある。
教科書に載っているような有名な絵画や彫刻が数多くあるわけではない。
行列してチケットを買ったりする必要のある博物館というわけでもない。
小さな良質の博物館は、劇場の舞台のようだ。
あるものは、近くで発掘されたものや、展示パネルだけれども、博物館で働いている人の力量で、そこは、単なる昔のもの展示や、一方的な情報を受け取る場所だけではなく、魅力ある劇場の舞台をすぐ近くで観ているようなものになる。
サルデーニャ島北東部、ガッルーラ地方のベルキッダにあるワイン博物館 Museo del Vino は、まさにそんな魅力的な小さな博物館の一つだ。
博物館の展示パネルを読むのは、ある意味、一人で教科書を読んで勉強しているような気持ちになる。
それが、ワイン博物館のジャンニ・クラスタ氏にかかると、有能な先生の楽しい授業を受けているみたいだ。
博物館、そして博物館が伝えたいものが、ダイレクトに伝わってくる。
色々な質問を投げかけることにより、それを元にどんどん話が膨らむ。
展示されているアンフォラは、複製かと思ったら、オルビア港から発掘された、なんと2千年前のオリジナル。
ローマ時代にアンフォラを船に積み、ワインを運んだという。サルデーニャでは、2千年前にすでに、ワインの貿易があった。
また、ワイン博物館の良いところは、博物館を見学したあと、ワインをグラスでいただけることだ。
この日は、パナーダを含む、軽食付きのプラン。
地元のサラミやチーズ、そして、ワイン博物館に来る前に見学した、オリーブオイルの搾油所で搾油したボザーナ品種のオリーブオイルとともに、2種類のワインを試飲した。
ガッルーラ地方の花崗岩土壌で栽培されたオリーブは、他の土壌で栽培されたものよりも、ポリフェノールが多く含まれ、バランスのとれた美味なオリーブオイルとなる。
田舎にある小さな博物館は、大抵地元の人が運営し、働いている。
地元愛の強いイタリア人は、自分の土地のことを余所から来た人に伝えたくてたまらない人も多い。
その地方の情報を得るのにもまたとない場所ともなる。
ベルキッダは、人口が3千人にも満たない小さな町であるが、トランペット奏者パオロ・フレーズの出身であり、毎年8月には、ジャズイベント、タイム・イン・ジャズが数日にわたって開催される。
また、良質のワインを作るワイナリーもいくつかある。
リンバーラ山の麓でもあり、リンバーラ山ではトレッキングも楽しめる。
ワイン博物館 http://www.muvisardegna.it/