シッディ・ワインフェスティバルとサルデーニャの希少土着品種

1月29日、30日の2日間、サルデーニャ南部の小さな町、シッディで、今年で5回目となるシッディ・ワインフェスティバルへ行ってきました。昨年も同時期に、シッディワインフェスティバルが開催されたのだけど、他の予定があったため行けず、今年こそは、と思い、日にちや内容をひと月ほど前から確認していました。

人口650人足らずの小さな町、シッディでなぜ、このようなイベントを開くのかというと、ロベルト・ペッツァ氏 Roberto Petza のミシュラン一つ星レストラン サッポセントゥ S’Apposentu があり、ペッツァ氏がこのイベントを企画しているから。
昨年、カリアリの Dal Corsaro が一つ星をとるまでは、サルデーニャ唯一のミシュラン星付きレストランでした。
月曜日の試飲会場は、シッディの公民体育館。
シッディの町に入っても何の案内もなく、携帯のナビを出そうかと話した瞬間、たくさんの車が駐車されているのを見てそちらへ向かう。

昨年行った友人が、一般に開放されている日曜日より、関係者向けの月曜日の方が良かったと言っていたことから、友人たちと月曜日に行くことにした。
色々な魅力的なイベントがあるのは日曜日なのだが、人が多すぎる。ワインをじっくり試飲するのには月曜日の方が良いということらしい。
業界関係者ってどういうことよ。と行く前に友人に聞いたのだけど、「まあワインが好きならばいいんじゃない。誰も追い出したりしないわよ」と言っていたとおり、受付では何も聞かれることなく5ユーロを払ってグラスをもらう。
入ってすぐのところに、友人のタティアーナとカルロのワイナリー デペール・ホッラー Deperu Holler のコーナーがあり、タティアーナがとびきりの笑顔で迎えてくれた。
タティアーナに会うたびに思う。こんな素敵な混じりけのない笑顔をする大人には、会ったことがない。
どこに行ったらいい?と聞くと、最初は泡から始めたらとのことで、フランチャコルタのスプマンテを試飲。余韻も長くとてもおいしい。

今年のシッディワインフェスティバルのテーマは、土着品種と生物多様性 vitigni autoctoni e biodiversità ということで、サルデーニャの非常に珍しい土着品種も試飲できた。
今回、是非試飲したいと思っていたのは、サルデーニャ島北部、オツェーリのアルヴァレーガ Alvarega。
ほとんど絶滅しかけていたこの品種を古いブドウ畑から見つけ、2003年からアルヴァレーガの栽培を始めている協会がサルデーニャ北部のオツェーリにある。
絶滅から守るために、サルデーニャ州の公的機関もバックについている。
でも、ワインは、まだ試験段階という印象を受けました。

サルデーニャ

それから、もうひとつのサルデーニャの貴重な土着品種、アルヴィジオナードゥ Arvisionadu。
サルデーニャ北部のベネトゥッティ Benetutti とボーノ Bono という2つの地域だけで栽培されていて、栽培面積は、およそ16ヘクタール。
サルデーニャ州というよりイタリア全体で16ヘクタールのみというため、アルヴィジオナードゥを絶滅の危機から救うために、2012年ににカトリックの信者会であるコンフラテルニタによって、Confraternita dell’Arvisionadu協会が結成されていて、現在は14人の生産者がいる。

アルヴィジオナードゥ
昨年末に、このコンフラテルニタの会長である若き農学者のジャンパオロ・サンナ氏に案内してもらい、5人の生産者を訪れることができた。
アルヴィジオナードゥは、食事にもそして、デザートにも合うというおもしろいワインだ。
なぜかというとアルヴィジオナードゥには2種類の醸造方法がある。ひとつは通常の白ワインの醸造方法、そしてもうひとつは、、ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノや、マルヴァジア・ディ・ボーザと同じように、フロール flor の下で熟成される。
後者の方法で熟成されたアルヴィジオナードゥと、べネトゥッティのお菓子の組み合わせは、非常に相性が良かった。
べネトゥッティで食べたアマレッティは、私が今まで食べたアマレッティのなかで一番おいしく、その味が忘れられず、後日、はるばるべネトゥッティまで買いに行ってしまった。

アルヴィジオナードゥ

このベネトゥッティ Benetutti という興味深い名前の町、Bene = 良い tutti = 全て、つまり「すべて良い」と意味の町には、温泉が湧いている。
町の名前の由来は、この温泉がすべてに良いということによるという説もあるそうで、町の名前と温泉だけでも、とても興味を覚えるのに、さらに希少品種のアルヴィジオナードゥがある。
その希少品種であるアルヴィジオナードゥ Arvisionadu を探るために、昨年末、ベネトゥッティを訪れた時に、べネトゥッティのアルヴィジオナードゥは試飲したのだが、ボーノのアルヴェジニアードゥとは、シッディで巡り合うことができた。

このアルヴィジオナードゥ Arvisionadu は、ボーノでは、Arvesiniadu アルヴェジニアードゥ と呼ばれている。
duで終わるサルド語由来と思われる発音の難しい名称に加えて、地域により微妙に呼び名が違いややこしい。

あれもこれもと色々試飲したいので、知っているワインは、割愛したが、マゾネ・マンヌの Costarenas 2009年は、やはり、試飲せずにはいられない。
マゾネ・マンヌのエノロゴ、ロベルト。昨年春にワイナリーで試飲させてもらったときより、さらに熟成が進んでいる。

サルジニアワイン

それから、生産者と昨年末にエノツーリズモに関するセミナーで知り合ったのだが、彼の生産するワインを知らなかったので是非、試飲してみたいと思っていた、アグリコラ・ソイ Agricola Soi のステファノ・ソイ氏にも会うことができた。
ワインの前に、生産者を知っていると、そのワインが今ひとつな時、その生産者の前でどう言えばよいのかいつも戸惑うが、そんな心配は全く無用だった。
エレガント。長い余韻。こんなデリケートなワインがサルデーニャの大地から生まれるんだ。
すっかり感激していているときに、知り合いのソムリエに肩をトントンと叩かれ、「僕のこと覚えてる?」と聞かれたのに、「えーと、誰だっけ?」なんて失礼なことをしてしまったほど、素晴らしいワインだった。
カンノナウのパッシートから作られる、ステファノのお母さまの愛称をワインの名前にした Lillò も愛情を感じるワイン。

サルデーニャ

シッディへ行く前に、どのワイナリーが出るのか、どんなイベントがあるのかインターネットで探したのだけど、シッディワインフェスティバルのホームページがあるわけでもなく、フェイスブックによる通知のみ。
イベントは、ポツポツと2週間ほど前から出ていたが、どのワイナリーが出るのかがフェイスブックに発表されたのは、開催の前日というなんともゆるいイベント、と思いきや、ナポリピザが振舞われ、ロベルト・ペッツァ氏監修の料理もある。
タイミング良く、カルロフォルテ産のマグロのお刺身をのせた珍しいピザも頂けた。

siddi

月曜日は15時に閉まってしまうので、バタバタと最後にチーズを購入し、復活祭の翌日のパスクエッタのタティアーナとカルロのワイナリーでの昼食会を約束した。

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