サルデーニャ島北東部ガッルーラ地方に、ルオゴサント Luogosanto という名前の町がある。
ルオゴ luogo は、「場所」、サント santo は、「聖なる」という意味。つまり、ルオゴサントは、「聖なる場所」という意味を持つ町。
私は中高をカトリックの学校で過ごし、大学はプロテスタントの学校に通ったがキリスト教徒ではない。しかし、ルオゴサントというその名前の響きは、やはりこの町に何かがあるのではという静かな期待感に踊らされる。
ルオゴサントは人口1800人ほどの小さなコムーネ(市町村)にもかかわらず、聖なる場所という名前にふさわしく、なんと、22か所もの「聖なる場所」(サントゥアリオ santuario)がある。
周辺は、どこの山奥に来たのかという錯覚におちいるような景色が続き、その山奥の道を通ってたどり着く、花崗岩に囲まれた町は、ひっそりとしているが静かな威厳を湛えている。
夏にはvipで賑わうエメラルド海岸からほど近いことが、非現実に感じられるような場所だ。
サルデーニャの表と裏、動と静。1960年代にアガ・カーンがvipのためのリゾート地、コスタズメラルダをつくる前のサルデーニャは、静の部分が表だったのだと推測できる。
さて、そのルオゴサントの町からほんの数キロほど離れた、大きな花崗岩(グラニート)の岩々の中に、一つの教会がある。
サルデーニャには多くの教会、特に、キエーザ・カンペストレ chiesa campestre (田園教会)と呼ばれる田舎にポツンと佇む教会が多くあるが、その中でも、最もかわった、そして魅力的な場所にある教会であると思う。
周囲の巨大な花崗岩の岩々に圧倒されながら、どこに教会があるのかを探す。大きな花崗岩の奥十字架が見え、そこに人間が建てた小さな教会が周りの岩々を生かした形状で建っている。
事実、教会内部には、自然にあった花崗岩の岩が組み込まれている。
4世紀に生きたとされる、サン・二コラとサン・トラーノ。
二人は、生涯を祈りに捧げる決意をし、ルオゴサントの人里離れた岩間や洞窟で、隠遁生活を送ったとされる。
1227年にフランチェスコ会の修道士の夢の中に聖母マリアが現れ、聖母マリアが示した場所へ修道士が行ってみると、サン・二コラとサン・トラーノのの亡骸を発見。
二人を発見した場所に建てられたのが、エレモ・サン・トラーノと呼ばれる教会だ。
エレモは隠者の住居、人里離れた場所という意味で、サン・二コラとサン・トラーノが住んでいた場所とされるため、そのように呼ばれる。
壁に自然のままの花崗岩の岩がはめ込まれた、不思議な造りの教会だ。
花崗岩の洞窟状の岩の下が祭壇となっている。
この洞窟に、サン・二コラとサン・トラーノが住んでいたとされる。
簡素な小さな教会の周囲は、大きな花崗岩の岩々に埋め尽くされた独特な場所にある。
少しツルツルしている岩を登り、教会の裏へ行くと、晴れた日にはコルシカ島までも見ることができる。
ルオゴサントを訪れたときに、トイレ休憩のために立ち寄った、サルデーニャの田舎のおじさんたちがたむろす普通のバール。しかし、ワイナリー、シドゥーラ Siddùra とルオゴサントの間という絶妙な場所にあるため、シドゥーラのワインが、グラスでこのような料金で飲めました。もちろん、ワイナリーのすぐ近くだから、ワインの状態は最高でした。