知り合いのソムリエから、アンフォラで醸造してワインを作る生産者がいると聞いて以来、是非とも訪れたいと思っていたワイナリー、オリアナス Olianas を訪問する機会に恵まれました。
ワイナリーを訪れて、ブドウ畑や醸造施設を見せてもらい、直接生産者やオーナーと話し、そのワインに対する情熱や考え、哲学を聞くのは私の楽しみの一つなのだけれども、前から訪れてみたいと思っていたワイナリーだったために、招待の話を聞いてからは、遠足を待つ子供のようにワクワクした気持ちになっていました。
オリアナスを訪れたのは、10月の下旬。
ブドウ畑が続く緩やかな坂道を通り、アーチをくぐって、さらにブドウ畑を通るとワイナリーに到着。
すでに、20人ほどの招待客がおり、私たちは、どうやら最後に到着したグループのようで、まずは、ロゼワインがテラスで振舞われ、その後すぐに、ワイナリーの紹介、ブドウ畑の説明と続きました。
ロゼワインは、目を閉じると、シャンパーニュ方式でつくられたスプマンテのような香りがします。
オリアナスは小高い丘の上に位置するため、他の場所より風が強く感じます。
この風がブドウを病気から守るのだそう。
今年の秋は例年になくあたたかい日が続き、見晴らしの良いテラスは、風が強かったのですが、寒さは感じません。
オリアナスのオーナーの一人は、サルデーニャのジェルジェイ出身だが、トスカーナに移住したのち、2000年にサルデーニャでオリアナスを始めたそうで、20ヘクタールのうち、17ヘクタールでブドウを栽培し、ビオインテグラーレという農法をとっている。ビオインテグラーレ biointegrale は、オリアナスが発案した商標で、有機農法をベースにビオディナミを取り入れています。
オリアナスでは、馬を2頭とガチョウ、ミツバチを飼っている。
土を固く押しつぶすトラクターのかわりに馬を使って畑を耕し、ガチョウは、畑を荒らす草を食べて畑をきれいにし、
羊は、ブドウの葉を食べ、動物たちの落とし物は畑の肥料となり、ミツバチはアルコール発酵に必要な酵母をブドウにもたらす。
畑では、農薬は使わない。
酵母 lieviti は加えず、ブドウが本来持っている酵母のみで醸造し、大地、周囲の環境そのものをワインで表現している。
ブドウ畑での説明ののち、醸造施設への見学へと進みます。見たいと思っていたアンフォラでのワイン醸造。想像していたものとちょっと違います。上の部分だけが見えるのでなんとも不思議な光景。みんなシーンとして、説明を待ちます。
アンフォラを使って醸造する利点は、樽のように木の香りなどのアロマをつけることなく、微量の空気に触れさせることができ、また、地中にあるため、温度を一定に保つことができるということ。
アンフォラの蓋をとって見せてくれた。
2週間ほど前に収穫されたブドウをアルコール発酵させている。
バリッカイア、ステンレスタンクのあるカンティーナは掃除が行き届いていて非常に清潔。
カンティーナの説明のあとは、お待ちかねの試飲。
この日は、30人ほどの関係者を集めてのワイナリー紹介だったので、チーズやサラミ、生ハムなどおつまみだけではなく、前菜、プリモ、セコンドと続いた。ペコリーノチーズは非常に美味。
ヴェルメンティーノ Vermentino di Sardegna DOC は、フレッシュで爽やかでありながら、ふくよかな後味が続きます。
一部分をアンフォラでアルコール発酵させます。
カンノナウ Cannonau di Sardegna DOC は、モストの30%をアンフォラでアルコール発酵させます。
ニョケッティ・サルディ(サルデーニャの代表的なパスタ)とトスカーナ料理の融合。
こんなニョケッティは初めて、とシェフの友人も呟く。
さっき見たガチョウのお肉と思うと少し複雑な気持ちはするが、野菜たっぷりのやさしい味わいで、心があたたかくなるようなパスタ。
サルシッチャ、先ほどのガチョウのロースト、野菜のローストもみんな素朴な味でおいしい。
2015年には、わずか2100本しか作られなかった、カンノナウ Cannonau di Sardegna DOC La Anfore di Elena Casadei
アルコール発酵に続き、6か月間アンフォラで熟成させます。
サルデーニャの伝統的なお菓子まで出てきておなかがはちきれそうです。
世界遺産のヌラーゲ遺跡、ス・ヌラージ Su Nuraxi は、オリアナスから車で約10分の距離。